築窯ワークショップ〜野焼き体験・古代人に挑戦〜

・主催 特定非営利活動(NPO)法人 子どもとともに山口県の文化を育てる会
     「心をかたちに」〜子どもたちの粘土の未来〜実行委員会

・共催 山口大学埋蔵文化財資料館

・参加校 山口県立防府養護学校、山口県立周南養護学校、山口県立豊浦養護学校、
       山口県立山口養護学校、山口大学教育学部附属特別支援学校

・開催日 平成20年1月26日(土)・27日(日)

・開催場所 社会福祉法人暁会 養護老人ホームやはず苑敷地(防府市江泊179)

イベントの内容
 このイベントは、参加校の児童が粘土を用いて自由に制作した作品を、弥生時代の土器焼成方法として推定されている「覆い焼き」で焼き上げる、という内容です。現代の造形と古代の技術が合体するとどのようなものが生まれるのか、非常に楽しい企画ですね。当館は、覆い焼きの技術指導としてイベントの支援を行いました。
 ここでは、時間の経過を追ってイベントがどのように行われたのかを紹介します。

1月26日(土)
午前11時〜 火起こし体験

 イベント当日は、心配された雨も降りませんでした。屋外で行う覆(おお)い焼きでは、当然ながら雨が天敵となります。まずは順調な滑り出しと言えます。
 今回のイベントは、山口大学教育学部の美術の教員である中野良寿先生の授業も組み込まれており、約30名の山大生も参加しています。
 午前中は、山大生が古代の火起こしの方法を学びました。みんな童心を取り戻したようで、笑顔で熱心に取り組んでいました。約30人で10回以上点火に成功しました。起こした火は窯の点火に使用するため、慎重に炭に移しました。

午後1時〜窯づくり

 午後からは、いよいよ窯づくりです。参加校5校の作品が混ざり合うことを避けるため、今回はなんと窯を5基つくることになりました。当館の公開授業や実験では最高2基しか設けたことがないので、どうなることやら…期待半分、不安半分という気持ちです。
 今回は、降雨による窯への浸水を防ぐため、下に耐火煉瓦を敷き詰めました。その上にワラを敷き、薪を積み上げます。山大生の機敏な動きもあり、ここまではスムーズにいっています。

 そして、薪の上に作品を積み重ねていきます。参加児童の作品は、細かな細工が施してあるものが多いため、この作業は慎重に行わなくてはなりません。そ〜っと、そ〜っと重ねていきます。この段階で割れてしまっては元も子もないですから…。
 なんとかうまく作品を積むことができました。今度は、再び全体をワラで覆(おお)います。形としては、円錐形(えんすいけい)になるように覆っていきます。
 最後に、全体を赤土粘土で覆っていきます。当日用いた赤土は、近隣の山から運んでいただきました。赤土だけでは粘性(ねんせい)が足らないため、これに水を加えてよく混ぜ合わせ、粘りけを出します。冬ですのでこの作業がとても辛い! みんな手をかじかませながら懸命に粘土を貼り付けていきます。
午後4時〜点火

 準備が整いました。いよいよ点火です。大学生がつくった窯だけあって?窯の粘土に顔が表現されていたりします。これもご愛敬ですね。窯の片側に点火用の穴を開け、窯の頂上と中腹4ヶ所に通気口の穴を開けます。
 そして、古代の火起こし方法で着火させた炭を点火口から挿入。なんとか点火にこぎ着けました! 山大生の皆さん、寒い中、ご苦労様でした。【授業を終えた学生のコメント

1月26日(土)〜1月27日(日)
夜〜朝…窯は燃え続ける

 火を扱いますので、当然窯を放置というわけにはいきません。NPOの皆さんと資料館員で、夜通し窯のお世話をします。
 覆(おお)い焼きでは、点火後徐々に窯内の温度が上がっていきます。午前3時30分頃、温度計測をしていた窯では最高温度約820度に上昇しました。他の窯も順調に焼成が進んでいるようです。
 しかしながら、さすがに5基も窯を築くと、その煙たるやものすごい量になりますね。会場となったやはず苑敷地の広大な面積が幸いしました。

午後1時〜ほぼ焼成終了

 下の写真が点火から19時間後の様子です。温度計測をしている窯では、窯内の温度が約100度となっています。しかし、窯壁が手で触れないほどに熱い窯もあり、それぞれ焼成速度が異なっていることがわかります。窯に表現された顔は…いまだ笑っているように見えますが、激闘の跡が見受けられますね。

午後3時…窯出し

 いよいよ窯の解体です。どうか作品がうまく焼けていますように!
 祈るような気持ちで一つ一つ窯を解体していきます。中を見ると…大成功です! ほぼ全てがしっかりとした赤橙色(弥生土器の色)に変化しています。少しだけ破損した作品もありましたが、大成功と言って良いでしょう。
 ついに、現代のアートと古代の技術の融合が完成しました。取り出した作品はいまだ熱をおびていますが、それ以上に心がホカホカと暖まりました。

おわりに

 参加児童の皆さん、作品はお手元に無事届きましたか? 皆さんの作品は、寒空の下、まる1日かけてゆっくりと焼き上がったものですよ。
 山大生の皆さん、作品は無事に焼き上がりました。皆さんがつくった窯、最後まで頑張ったいましたよ。800度の内、数百度分は「皆さんの熱い気持ち」です。
 NPOの皆さん、会場を提供していただいたやはず苑の皆さん、お世話になりました。当館にとって新たな取り組みの契機となりました。厚く御礼申し上げます。

 最後に、子ども達の素敵な作品集です。ご覧下さい。

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